今回は、古代ギリシアの二大主人公
アテネとスパルタを攻略します。
ポリスの発展
支配のカラクリ
ポリスは貴族が支配権を握っていました。
そこでは、あるカラクリによって、
貴族と平民の格差が生まれていたのです。
貴族は土地・家畜・奴隷を圧倒的に所有し、
その富により高価な武具を買い、
戦争の主力となりました。
「血を流せないものに発言権などない!」と、
貴族はポリスの役職を独占したのです。
「え、平民も戦えばいいじゃん」と思ったかもしれませんが、
そうはいかなかったのです。
なぜなら武具が高価で平民には買えないから。
だれか偉い人が武具を支給してくれるわけではなく、
武具は自弁しなければならなかったのです。

自ら血を流すだけ、支配者にしてはマシだにゃ
経済の発展
光
ポリスでは商工業が発展し、
それに伴う海上交易も、
イオニアのポリスを中心に栄えます。
やがて人口が増大すると、
土地不足のため植民がおこなわれ、
植民市がたくさんできます。
植民市には、
ビザンティオン・マッサリア(今のマルセイユ)・ネアポリス(今のナポリ)
など、今の都市の原型になるものもありました。
こうした商業活動は、
小アジアのリディア発祥の
鋳造貨幣が取り入れられたことで、
さらに発展します。
影
しかし、この「貨幣」というのがクセもので、
貧富の差を生んでしまうのです。
この、
貨幣経済の浸透→貧富の差の拡大
という世界史の法則がピンと来ない人は、
こちらを必ずチェックしてください。
平民の台頭
経済の発展により、
一部の平民は富裕化しました。
そう、武具が買えるようになるのです。
一方このころ、戦法も変わり、
重装歩兵部隊(ファランクス)🛡
という、多くの兵士が密集するスタイルが主流になります。
そう、兵数稼ぎのために平民も戦場に呼ばれやすくなるのです。
こうして、平民も戦争に参加するようになります。
そして、「ただ血を流すだけじゃ損だ!!!」と
平民も政治参加を要求するようになるのです。
アテネとスパルタ
ここで、古代ギリシアを彩る二大主人公
アテネとスパルタ
を攻略しましょう。
アテネ
集住型として出来たアテネは
いわば表の主人公。
そんなアテネを動かしたのは五人の男
①ドラコン🐉②ソロン③ペイシストラトス④クレイステネス
そして、
世界史でも屈指の英雄⑤テミストクレス⑥ペリクレス
です。
第一の男:ドラコン🐉(立法者)
前8世紀に王政から貴族政になってから、
貴族がアルコンという執政官になり、
アテネを統治していました。

アルコンは前7世紀から任期1年になりましたが、
任期が終わってからも、
アルコン経験者だけの会議をつうじて、
国政を操りつづけました。
前節で説明したとおり、
一部の平民が富裕化したことで、
貴族と平民との対立が深まります。
そこで現れたのが、
第一の男・ドラコン🐉です。
彼は立法者として対立解消につとめます。
その方法は、成文法の制定です。
それまでは法律が文字の形でしっかりと定められておらず、
その場その場の裁判官(貴族が担当)の気持ち次第でいくらでも
裁判・制度をコントロールできてしまいました。
たとえば、ブドウを盗んだ罪人に対する罰を、
死刑にすることも、謹慎たったの一日にすることも
自在にできてしまうのです。
しかし、例えば「ブドウ一房を盗んだら罰金1万円」
と成文化されていれば、
貴族がやりたい放題する余地は残っていません。
なかなか理にかなったドラコン🐉の立法ですが、
肝心の成文法が厳格すぎて、
ウケはよくありませんでした。
第二の男:ソロン(調停者)
貧富の差が解消されないまま、前6世紀初めには
借財によって自分の身体を抵当に入れてしまったために、
隷属的労働に陥る人々が増えました。
そこで調停者として現れたのが、
第二の男・ソロンです。
彼は、なんと借財を帳消しにし、
市民が身体を抵当にすることを禁止して、
市民の奴隷化を防止しました。
また、財産別に身分を定め、
各身分ごとの政治的役割を決めました。
(財産評価政治=ティモクラティア)
これにより、
富裕化した平民は文字通り財産を評価されて権利を拡大したものの、
多くの平民の不満は解消されませんでした。
たとえ一時的に借財が帳消しになっても、
貧富の格差を生んでいる構造自体をなんとかしない限り、
根本的解決にはならないのです。
第三の男:ペイシストラトス(僭主)
こうして現れた第三の男が、ペイシストラトスです。
彼は戦争で勝ちえた名声をもとに貧農の支持をえて、
策略により僭主(非合法な独裁者)となります。
彼は貧農に土地を配り自立的市民へと成長できるようにしてあげたり、
(つまり、狭い土地で細々と暮らすしかなかった貧農に
はい上がるきっかけをあげた)
ラウレイオン銀山を開発して富をもたらして神殿を美化したり、
「非合法な独裁者」というわりには割といいことをします。

「不良が捨て犬を拾ったら良い人に見える」
理論だにゃ
彼はまた、
ホメロスの叙事詩やアテネ女神礼拝をひろめるなど、
アテネへの愛国心を高める政策もおこないます。
愛国とは国への崇拝でもありますから、
その国を牛耳る僭主への崇拝にもつながるわけです。
また愛国心のもと他ポリスや異民族を敵視し団結すれば、
団結の象徴としての僭主を人々が美化して考えるようにもなるのです。

独裁者が考えそうなことだにゃ
第四の男:クレイステネス
僭主政治のあとに登場したのが、
第四の男・クレイステネスです。
彼は貴族を抑えて、民主政の基礎を確立しました。
貴族は、血縁にもとづく4部族制を権力の拠りどころとしていたのですが、
これを解体し、かわりに、
居住地区(デーモス)により市民を区分することで、
貴族も平民もごっちゃにした地縁的な10部族制をはじめます。
こうして貴族の温床・4部族制をブッ壊したうえで、
五百人評議会や陶片追放(オストラシズム)など、
平民の意見がより反映される制度をつくりました。

陶片追放は僭主防止のためのシステムで、
平民もふくめた多数決をへて
「僭主をねらっている」と判定された人は
国外追放されるというものです。
⑤テミストクレス⑥ペリクレスは、
また後で説明します。

大人の事情だにゃ

ちがうよ
スパルタ
征服型として成立したスパルタは、
いわば裏の主人公。
少数のスパルタ人で多数の服属民を支配するために、
常に戦時下のような厳しい社会体制をとり、
ギリシア最強の陸軍国として君臨しました。
「スパルタ教育」の語源となった厳しさです。
この厳しい制度は、
伝説的な立法者リュクルゴスがつくったと信じられていました。
立法者を伝説化することで、
制度そのものの権威を高め、
人々が制度の厳しさに逆らいにくいようとしたのです。
征服型であるスパルタは、
支配ー被支配が明確な3身分に分かれていました。
①スパルタ人
完全な市民権をもち、所有地を隷属民に耕作させることで、
政治・軍事に専念できる支配階級です。
少数のスパルタ人同士で揉めるわけにはいきませんから、
市民の平等が重視され、
貧富の差の元となる貨幣は禁止されました。
②ペリオイコイ
異民族である劣格市民です。
土地をもち、重装歩兵として戦いもするものの、
参政権はありませんでした。
③ヘイロータイ
スパルタに抵抗・服属した隷属農民です。
スパルタ市民の土地に配属されて、
貢納の義務を負いました。
さて、役者はそろいました。
ここから、数々のドラマが繰り広げられるのです・・!
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